みなさん、こんにちは。
現役オンコロジーMRのゆってぃーよ。
今日、大日本住友製薬から大きな(!?)ニュースがありましたよね。
減損損失の計上に関するお知らせ(大日本住友製薬プレスリリース)
ブロックバスター(年間1000億円)の大型製品になると目標立てていた、抗がん剤のナパブカシンが大腸癌第Ⅲ相試験のネガティブな結果を受けて、全ての開発中の試験を中止すると発表した。
試験結果なので仕方ないんだけど前臨床、第Ⅰ相試験、第Ⅱ相試験、第Ⅲ相試験と経緯を辿る過程で甚大な時間と費用を費やしてきたが結果、無駄になった。
今回発表した大腸癌の併用療法の第Ⅲ相試験の前に大腸癌の単剤、胃癌、膵癌も全て開発後期の第Ⅲ相試験でネガティブな結果を受けて中止になっている。
莫大なコストがかかっても、発売までこぎ付ければ売上で、それまでのコストを回収する事は可能だけれども発売出来なければ、今までのコストは回収出来ない。
しかも最終段階でことごとく失敗してしまうと、そのダメージは計り知れない。
メガファーマであってもこの状況はかなり厳しい中で、中堅規模の大日本住友製薬にとっては本当に死活問題だ。
今日はこの事について解説していきます。
大日本住友製薬は抗がん剤領域に活路を見出して取り組んでいる企業。
AnswersNEWSの記事がとても分かりやすい。
大日本住友 難航する「がん領域」の立ち上げ(AnewersNEWS)
この記事からも抗がん剤領域にかける想いとナパブカシンの重要性が分かる。
2012年にボストン・バイオメディカルを買収した最大の目的なナパブカシンが欲しかったから。
買収してからは苦労の連続。
2014年に大腸癌単剤療法の第Ⅲ相試験中止。
2017年に胃癌の第Ⅲ相試験中止。
2019年に膵癌の第Ⅲ相試験中止。
2021年に大腸癌併用療法の第Ⅲ相試験中止。
更に、進行中の第Ⅰ相試験、第Ⅱ相試験の固形がん、肝細胞癌などの全て試験を中止した。
要はナパブカシンは世の中に出てくる事なく終了したという事。
ナパブカシンだけは、絶対に失敗出来ない理由があったんですよ。
売上の約40%を占めるラツーダが23年に特許が切れる。
売上合計約4000億円のうちラツーダの売り上げが約1850億円。
全体の売り上げの約40%を占める薬剤があと2年で特許が切れる。
特許切れに対して、対処出来る唯一の対応策はラツーダの代わりになる大型製品を上市する事。
このラツーダの代わりになると考えられていたのがナプバカシンだったんですよ。
そのナプバカシンの開発が全て中止した。
この状況は企業存続にも影響を及ぼしかねない大きな出来事なはずだ。
大日本住友製薬は2017年に早期退職を実施しているが、きっとナプバカシン開発中止を受けて近い将来日本でも再び早期退職を実施すると思う。
大日本住友製薬が大ピンチ。このままでは近い将来再び早期退職をやる気がする話のまとめ
大日本住友製薬が大ピンチだ。
近年色々な試みをしているが、ナパブカシン開発中止の前には焼石に水のようなインパクトだ。
ちなみに大日本住友は過去に2つ記事にしている。
大日本住友製薬が「MRが過剰」といってリストラしたのに方針転換して「MRを増やす」と宣言した訳
大日本住友の会長が語った経営者の苦悩が本音だと感じた。MRと製薬会社の将来を考える話
2年後に売上の約40%を占めるラツーダの特許が切れる。
それに代わる薬剤としてナパブカシンを開発していたが全ての試験が中止になり開発は失敗に終わった。
ここから、起こる事は容易に想像が付くでしょう。
かなりの確率で人員整理が行われると思う。
更に言えば、過去のベーリンガーの早期退職のように、かなり強いトーンで退職リストを上がった社員は追い込まれると思う。
ちなみに、大日本住友製薬が早期退職をするかどうかは私見にすぎないか、その可能性が少しでもあると感じるのでれば、今のうちから行動出来る事はしておいた方が賢明だ。